<遥か時の流れ、一瞬を生きる生命としてここに> 1

  • 2008/03/03(月) 16:40:58

<遥か時の流れ、一瞬を生きる生命としてここに> 1

かつて存在していた文明が、真実を知ろうとしない愚かな者達によって、
破壊され朽ち果て、死の世界となった星を数多く見てきた。

私は、今小さな惑星の軌道上にいる。
調査船で降りた者によると、
この星の文明は周りの惑星まで行く程度のものであったようだ。
その時期までにいくつかの危機を経験してきている筈なのだが。
「選択の時」を迎え結果として選んだ「破滅」。
選択の時に、気がつかないふりをしていると必ず、
この道をたどるのは、宇宙に存在する者達の宿命であろうか。
幸いにして、私の世界は「共存」の道を選択し
今、宇宙の真実を未来に伝える事を
仕事として、他の世界の生命と旅をしている。

決して見たくはない現実がここにある。
しかし、すでに全身の毛が逆立つような、
恐怖・怒り・悲しみの地獄がここまで伝わって来ている。
その星は   と呼ばれた。
漆黒の宇宙に浮ぶ宝石”青く輝く水の惑星”であったと
uchu


<遥か時の流れ、一瞬を生きる生命としてここに>2

  • 2008/03/04(火) 16:43:10

<遥か時の流れ、一瞬を生きる生命としてここに>2
 
恒星から遠く、暗い宇宙に光る氷の星。
輪を持ついくつかの惑星も。
ここからの眺めは、美しく気にいっている。
全てを氷に閉じ込める星。
遠く輝く恒星の灼熱と相反する世界。
闇黒の記憶は、凍れる世界に閉じ込めて、、。

また呼び出しだ、調査中の惑星の軌道上に戻る。
行かなくてはならない。仕事を放棄するわけではないが、
<危険>心にイメージが忍び寄ってくる。

下からビックパワーの、お迎えだ。
「大丈夫か?」、まったく大きな声だ。
振り向いた途端、声の主リゲルは「NO!」と。
「くくくっ!」
「笑った、大丈夫だ。貴方は繊細だからな」
「ああ、少しばかりな」
「桁違いな”少し”だ、はははっ!」
彼と私は同じ仕事のパートナーだ。
「この星は、異文化がいろいろ入ったようだが、
あとに続かなかった。
興味深いものがたくさんあるが、解らない事が多い。
貴方が必要だとさ、無理はするな」
リゲルは、そう言いながら、静かに情報を伝えてくれた。、
リゲルの笑顔に<危険>の存在はない。
そう、この星は遥か昔に危険な存在ではなくなっていた。





<遥か時の流れ、一瞬を生きる生命としてここに> 3

  • 2008/03/04(火) 16:46:00

<遥か時の流れ、一瞬を生きる生命としてここに> 3


この星を破壊した文明を知るすべは、ほぼ壊滅し、
僅かに残ったところが点々とあった。
それを調べる事により、滅んでいった星々に
いくつかの共通点がある事が、ここでも証明されることになる。
探査メンバーが待つ山に降りた。
この山の地には、文明が存在していた事を示すものがあった。

かつて緑豊かな森であった木々の化石群と、
人々の生活を潤していたであろう川の跡と、町と思しき遺跡。

砂を舞い上げて乾いた風が吹いた。

目の前に昔の町が蘇る。
恒星が、眩しく輝き、この星を暖かく見守っている。
川の水が生命たちを育んでいる。
「人」は、水路を作り大地を潤し、作物を育てている。
赤・緑・白・黒・黄色の色彩豊かな長い布を、
穴をあけてかぶるように着ている「人」
(女性)がこちら側に3人、向う岸に2人。
何か植物の葉と根のような物と、赤い実を洗っている。
食事の準備であろう。
「小さい人」(子供)が、5人。
浅いところで楽しそうに水遊びをしている。
いや、もう一人が水の中だ。
後ろ向きの「仲間」をおどすつもりのようだ。
足元に近寄って飛び出した。
相手は「うわぁ!」と叫び声をあげながら、
派手に水しぶきをあげて倒れ、皆、大笑いをしている。
対岸の道を、家畜を引く「人」(男性)が、
髭面の口元を楽しそうにゆがめて、
川の様子を見ながら、森に向かって歩いていった。
「人々」のあたたかな心が伝わってくる。

緑の木々から聴こえる小鳥達の歌。
岸辺で風にゆれている白い小さな花の優しく甘い香り、
そして清涼な水しぶきの湿度を含んだ心地よい風がふく。

恒星の周りを数百回周ったであろう時が過ぎて、
他の陸地から、人が押し寄せ占領と虐殺、破壊。
そして、ここに彼らの子孫は、いなくなっていた。

それからさほどの遠くない間に、
大小の戦争がこの惑星上で頻繁に起こった。
自分達の正義の為に戦争をする彼らは、
戦争を商売にしている者の思惑通りに、
少し時が過ぎるとまた戦争を繰り返し、
悲惨な地獄の爪あとをここ彼処に残した。
誰もが、殺し合いのバカらしさを知っていた。
呪われた人々は、逃れるすべを模索し、
平和と小さな幸せを望んでいた。

目眩?!
軌道上で感じた、恐ろしいイメージが心臓につかみかかろうと、
急速に足元から這い上がって。
いきなり頭と心臓を中から、吹き飛ばされるようなショックが襲った。

それは、一部地域における小競り合いの末、
数人の狂った権力者によって、もたらされた地獄であった。
憎しみを、悲しみを、苦しみを、喜びを、夢を、幸せを、愛を、、、。
その全てが、悲鳴を上げてこの星から宇宙空間に飛びちった。

最初の攻撃で都市という都市は破壊された。
その時点で攻撃すべき敵はいなくなり、
戦争は終っていたが、攻撃は続いた。
悪魔の炎・悪魔の吐く息が、何度も地上を覆った。
この星の知的生命体「人」の多くがいた場所は、
巨大なクレータ−が幾重にも重なり、
その攻撃は、星を繰り返しえぐった。

表面で起る全てを、忍耐の限り静かに信じて見守ってきたが、
おそろしい破壊が、星を包み込んでいった時
この星は、悲惨を封じ込める事を決断した。
地表の多くを、内部から吹き出た怒りの溶岩で、
破壊者達の世界と、その歴史を封じ込めていた。
僅かに残る海も、以前に生息していた生物の環境ではない。

悪魔の核、そして星全体規模の火山活動による
大気・土壌汚染の影響は、
万年・億年の時を凍りつかせ生命を阻むものだった。

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<遥か時の流れ、一瞬を生きる生命としてここに> 4 

  • 2008/03/04(火) 16:48:59

<遥か時の流れ、一瞬を生きる生命としてここに> 4  

リゲルが私を支えながら心配そうに見つめていた。
『大丈夫か?』だから言ったんだ。彼を連れて帰る」
「今、ついたばかり、、」ベガはリゲルの目を見て言葉が止まった。
「あぁ今着いたばかりさ、その数分で全てが解ったということだ。もう十分だ」
調査隊の責任者ベガの抗議も、リゲルの怒りには通じない。
そしてベガは、リゲルを超える者がそういない事を知っていた。

                 ・

メディカルセンターの部屋の天井とリゲルの顔がぼんやり見えてきた。
胸が痛い、頭痛もある。そのまま意識を失っていたようだ。

「ひどい顔色しているぞ。俺のようだ」
ニヤッとしながら、私を覗き込んでいる。
「貴方の最近の状態から、地上に下ろす事を反対したんだ。
この仕事を長くやりすぎている、もう十分だ。
貴方なら最後の文明の残骸を見るまでもない事が解っていたからな。
ベガは”それでは、ここの調査が終った事にはならない”と言いやがった。
任務になると冷たい女に変身するな。
この星を最後に、仕事はやめるぞと言ってすっきりした。
まだ痛むようだな。こんなにダメージを受けるとは、本気で止めていれば良かったな、悪かった」

『ありがとう。しかし彼女を脅してはならない』

「そうだな。ベガも顔色変えていた。しかしダメージを貯めているのを見ていて、俺の優秀な頭脳が、貴方の精神を護れとさ」
笑いながらエメラルドのような美しく大きな緑の瞳が、私を覗き込んでいる。

情報を受け取り、リゲルの目は暗く沈み怒りをあらわした。
「うぅ、滅んだ文明はどこもかしこも本当に狂っている。
セントラル・シティで報告と同時に、この調査の終了にしてもらおう。酷い、、」

『伝えられるのは限られた情報だけだ。普通神経が持たない』

「確かに俺は、普通じゃないな」

『いや、リゲルにもすべては伝えていない。しかし間違えなく君のフォローがあってできる事だ』

「くそ!まっいい、俺が役に立っているわけだ。
十分に休養をとってから、あの星の報告をするといい。その時はまた俺が必要だな」

『ありがとう。ドクターが来る』

少しすると部屋の扉が開きドクターが入ってきた。
「患者に大声で何を話しているのですか」巨人のリゲルを見上げて言った。

「あぁ、地声だ」

私がニヤッとしたのを見た医者が
「良い刺激に、は、なっているようですね。」
わざと区切って言いながらモニターを見ている。

「脳は厳重に保護されているようでしたが、心臓へのダメ−ジは酷く一時、皆慌てたのですよ。まったく驚異的な回復力です。
貴方には神経に作用する薬が効かない様で申し訳ありません。他の方法も検討して
いるのですが、リゲル、君がそうして付き添ってくれて助かっているよ。
二人だけの時のデータ―が違うからね」

「少しは回復の手助けになればと思って側にいるんだが、鋼の心臓の持ち主だからもう大丈夫だ」

「しかし今の仕事は、やめなくてはなりません。間違えなく負担が大きくかかっていますよ」

『分かっている』

「さあ、休ませて上げてください。また後で」
「おやすみ」そのままリゲルは、一睡もせずに付き添ってくれた。


*                  


今朝はすっきり目が醒めて気分も良い。
少ししてドクターがやってきた。
「モニターで経過を見ましたが、もう退院してもいいでしょう。
仕事の件では報告を入れさせてもらいましたよ。暫く休みを取ってください」
と言ったあとに付け加えた。
「メディカルセンターでは、貴方とリゲルを大歓迎します。
なぜならだいぶ前から、一斉におかしな事が起ると度々報告が来ていて、
それは貴方やりゲルに関係あるとメディカルセンターのデータ―管理と
医者達の間で噂になっていました。もちろん外には漏らしてはいません。
医者が要らないことになってしまいかねません。いつか来ていただける事を願っています」

「新しい仕事は、ドクターのお手伝いか。それもいいが、プレイゾーンの管理人を
しながらじゃダメですかね」とリゲルが言った。

「プレイゾーン、はははっ!子供達はいいなぁ。しかしこちらにも来てくれる事になれば嬉しいですね」

この5日間点滴だけで後は大きな声の持ち主の力強いパワーが静かに私を包んでいてくれた。
彼のパワーに癒される事の気持ちよさは、すでに経験済みだった。
精神と身体に傷をつけてでも自分のコントロールできる限り、
ここの者達と共に生きる事が大切なのだ。


ベガは毎日来てくれたが、ある緊張感がつきまとっていた。
リゲルには彼女に伝える事があると、入院以来始めて部屋を出てもらった。
私と同じようにリゲルの素晴らしさを知っていた。
しかしリゲルは私の事でかなり強い調子で言ったらしい。
過去に彼女が経験した何らかの怖れが復活し、彼女の心にプレッシャーをかけていた。

ベガの瞳を見つめながら
「毎日ありがとう。私は心に叫びがあるのをほっては置けない、その為なら違反行為もする。
不必要な記憶は消しても良いし、利用できる部分だけ残しても良い」
と言ったがこれからの為に彼女の意見は無視した。

「今の仕事はもう降りる事にするよ。君は責任者として立派な仕事をした。
また別な仕事を一緒にしたいね」
「ありがとう、私が誘ってしまった事で、大変なことになってしまい、、」
気丈な彼女の目に、うっすらと浮ぶものがあった。

「私があえて、望んでやった事だ。皆に迷惑をかける事になった。
私の方こそ謝りたい。もう大丈夫だね」
彼女はゆっくりと頷くともう一度謝って、笑顔で部屋を出て行った。

退院の際に医者は、
”残念ながらメディカルセンターでは、あなたの神経構造は複雑すぎて手におえなく、
ショック状態を緩和する為のものを中心に強化栄養剤を投与するしかありませんでした。
暫くはゆっくりしてください”と嘆いていた。解りきっている事だった。

                *

異星人同士が行動する為に必要な検査は、どこでも当然行われる事だが、
ここでは仕事の関係上、徹底した検査が全てのメンバーに対して行われた。
科学者も医者も興味の全てを持って、”能力と影響の実態”という研究課題で
リゲルと私は何度か調べられた。

結論はそれぞれ惑星人の中でも希な突然変異だとされている。
解明できるまで付き合うつもりは無い。ここでも私は違法行為の常連者となった。

リゲルは、
「俺たちはきっとコンピューター登録機密事項に、特殊生命体か化け物となっているぜ」
と冗談を言っていた。

宇宙に存在する全てが、唯一無二の存在である事実は変えようが無い。
しかし、どうも一定の枠に入れて同じかそうでないかを、分別したい種が多くて厄介だ。

これで子供達の元気に遊ぶ姿でも見れば、かなり完璧だろう。
若い生命は、個々がエネルギーに満ち溢れ、周りに燦燦と生命エネルギーを
惜しむことなく降り注ぐ。
それはまるで恒星のようだ。いや、生きた宇宙そのものなのかもしれない。
この子等に「すばらしい未来を」と思わない者はいないはずなのだが、
現実はあまりに悲惨な事が多い。

久しぶりに
「プレイゾーン”に行ってみようか」とリゲルに声をかけると
「おぉ行くかぁ?! だが適当にしないと、滅茶苦茶に遊ぶのは、まだ早いだろう」
「それはリゲルだろう。私は君と子供たちが遊んでいるのを見ている」
「確かにそうだ!ハハハッ!」
彼は入院中一睡もせずに、付き添ってケロッとしているのだ。
そしてメディカルセンターの治療だけでは、私はまだ深い眠りについていただろう。

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<遥か時の流れ、一瞬を生きる生命としてここに> 5

  • 2008/03/04(火) 16:49:51

<遥か時の流れ、一瞬を生きる生命としてここに> 5


調査隊のメンバーと展望ルームへ来ていた。
自分が宇宙空間に浮いている感覚を得られる。

私は、今ここの銀河を外から見ている。そしてそのイメージを皆で共有していた。

漆黒の宇宙に忽然と、まばゆく広がる光の銀河の渦。完璧な調和を保ちつつ恒星が誇り高く輝いている。
聴こえないはずのない銀河の回転の音が、足元から登って全身を包み込む。それは、宇宙の大交響楽と光の共演。
まったく言葉を失う美しさとはこの事だろう。
暫くその美しさに酔いしれていた時、ふと思い出したイメージが静かに浮んできた。
まるで”忘れないでくれ”とでも言うように。

真っ暗な闇に圧倒的なインパクトで輝く”青く輝く水の惑星”
それは、水蒸気の白く輝く雲に、見え隠れする緑の森と土の大地。
エメラルドグリーンの波、マリンブルーのグラデーションが美しい生命の母、海。
両極に凍てつく太古の氷をかかえ、
青く透き通る薄い大気の層で包まれた”奇跡の惑星”であった。

間違えなくあの星のかつての姿であった。なぜか懐かしいような全員言葉も出ない。

少しして
「オイ〜、勘弁してくれ。大の大人が揃いもそろって」と巨体のリゲルが沈黙を破った。
皆、夢から覚めたように笑った。
「これがあの星の姿、、、、綺麗」ベガが呟いた。

地上に降りた調査メンバーの一人が、
「あの星の現状からは想像もつかないな、あまりに美しいだけに辛いものだ」

”青く輝く水の惑星“は私達の前から姿を消し、展望ルーム一杯に星の瞬く見慣れた世界がそこにあった。

私は皆に謝ってそこを出た。
ベガは、リゲルに『一緒に行って』と伝えていたが、
リゲルは返事をせずに私の後についてきた。

全てを報告するため、シップの中央にあるメインコンピューターとコンタクトを取る宇宙港の区画内にあるブースへ向かった。
本来外から帰ってきた者は、エア洗浄と全身チェックをされ、ここに直行する規則になっていた。

静かに後から来たリゲルはブースの前でニヤニヤしながら言った。
「最低な顔色しているぞ大丈夫か?ここで待っている。頭来てコンピューターをぶっ壊さないでくれ」
「ああ、その時は教えるさ。全区画に非常事態、退避命令をだせとな」
「がははぁ〜!何光年離れたらいいんだ?全員が逃げるまで我慢して欲しいもんだな」
「我慢?この宇宙に、知的生命が誕生して以来、悲惨な歴史が未だに繰り返されている。
時にはこの世界の悲惨な記憶ごと、すべてを消してしまいたいと思う事があるよ」
「この銀河ごとかぁ?!それは勘弁してくれ。フフッ、ここで待っている。」
リゲルらしい反応が返ってきた。

「ここで待っている」と2度言った。 
吹っ飛ぶな、必ずここへ戻って来いと言うメッセージだ。
リゲルには何度か迷惑をかけていた

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