<遥か時の流れ、一瞬を生きる生命としてここに> 9
リゲルと共に私の星に行く、同行許可が出た。
我が家にいる間だけでも、少しリラックスさせてもらおう。
輪の外にある宇宙港に暗証コードを使って連絡を入れた。
[別ルートにて直行・こちらからコンタクトを取るまで完全OFF]
[暫くお待ちください]
これだから、シップで帰るのは面倒でいやなのだ。入港規約改正を申し出よう。
『私だ直行する。完全OFFだ 解るな』
『アッ、はい!失礼致しました。コンタクトを、お待ちしております』
『よろしい』
私の船はりゲルには狭い、我々に合った船を新しく作らせよう。直行便登録をして(笑)
移動に乗り物が無くても良いが、緊急事態に対応する為にシップは必要だ。
「さあ、送ってもらおうか?」
「おい!連れて行ってくれるんじゃないのか?俺じゃ、入れないぞ」と困ったように笑った。
「くくっ、一瞬で着く」
「O、Nか、、な、何度経験しても慣れる事はないな」
「リゲル、どこを見ている?ここだよ」
ゆっくり周りを見回して
「あ〜嘘だろ〜、、、イメージが違った」
壁のように高く山頂に雪をかぶった山々に囲まれた、高原の美しい湖のほとりに我が家はある。
「そう?ジャングルを越えて山の洞窟の奥深くにある家か?」
そう言いながら船を下りた。
「気持ちのいいところだな〜。山も湖も本当に綺麗だ」と言いながら深呼吸して
「?あっ!空気が、俺の周りの空気は俺の星のものか?」気がついたようだ。
「そう、いいもてなしだろう」
「良い、肺の細胞が喜んだ!」
「くくっ」
そのまま歩きながら水際へ来ると、向こうから3羽大きな白い水鳥がやって来た。
「ひさしぶりだね」と彼が声をかけた。
頭を下げるようにして、嬉しそうによってきた。
『リゲルは、私の大切な友人だ』と私を紹介している。
すると水際までバシャッ、バシャバシャッ!!と魚達が集まってきた。
「どこへ行っても周りに人といわず、あらゆる生き物が寄ってくる。なんか楽しくなってくるよな」
「昔からね」
「ここでは私がコンタクトを取るまで静かに休める。さあ、私の家へ。リゲルにもくつろげると思う」
一見して質素で小さな建物だった。巨人りゲルから見ると物置程度の大きさだ。
正面の壁だったところに、スーッと筋が入って音も無く入口が開いた。
「まるでシェルターの入口じゃないか」
「ビックパワーのプライベート・ルームみたいなもんだ」
「なるほどね」
中へ入ると外観とはまったく異なり、充分な広さがあった。
[お帰りなさいませ]とどこからとも無く、柔らかな声がした。
バルコニー側の全面が、大きな透明の扉で、外に広がる景色を満喫できた。
「!このリビングからの景色は、まるで絵だなぁ」
「刻々と変化する絵画と言うところだろう。ところで何か飲み物は?」
「アンドロイドでもいるの?」
「いや。今は木苺の時期だな。木苺とミントのお茶も口がすっきりする」
「あぁ、そうか、、え?」
テーブルの上にお茶と、木苺のチョコが。
「この家全体が、客をもてなしてくれる」彼が微笑みながら言った。
「、、、すごいな。なるほど滞在区は、お客が喜ぶように出来ている訳だ」
「ここは私の家だ。滞在区はこことは違う。後で連れて行こう」
「!滞在区以外に、私を連れてきて大丈夫なのか?」
リゲルは少し驚いて言った。
「私の家だから問題ないし、私がコンタクトを取らない限り誰にも分からない。ここでは私もONでもOFFでもない。少し開放の状態でいられる。リゲルも私が目を回さない程度にガードをはずせ」とニヤニヤしながら言った。
リゲルは、やっと私の変化に気が付いたようだ。
「本当に不思議な能力の持ち主だな。普段は我々に合わせているわけなんだ」
「そう、ある程度合わせている。でもそれはリゲルも同じだろう。私は他より少しばかり心が柔軟なだけだ。宇宙は常に変化し続けるが不変の法則と真の自在そのものだ。そして君も私も本来自在のだ」
「あなたを見ていると本当なんだと思うよ」と美しいエメラルド色の瞳を輝かせて私を見つめている。
「ところで御曹司というわけでもなさそうだし、星ではいったい?」
「外の世界で多くのことを学んだ。役立つ新しい情報は、すべてこの星のデーターに課題として保存と選択・活用をしている。そしてこの星だけでなくこの世界で役に立てたいと思っている」
「えっ?情報収集が仕事なのか?」
「くくっ、この星で情報を仕事にする者はいないよ。知ろうとすればその人の能力に応じていくらでもできるのだから。それらの情報を最小の形でどれほど多く残し、それぞれに役立てるかは、歴史的日常だ」
「頭に他の人より遥かにでかい倉庫を持っているようなもんか」
と言いながら笑っている。彼の頭の中には、巨大な頭の私がいた。
「おい!それは酷すぎる。宇宙の情報は宇宙に置いておくし、リゲルの情報は君が持っている。それでいいのだ」
「はぁ?どういう事?」
彼は静かに微笑むと
「知りたいか?巨大コンピューターをいくつも用意する必要が無いぞ。くくくっ」
「それって、また少し目眩のするやつか」と少し嫌な顔をした。
「?どういう事だと聞いたのは、お前だろう」
「ん」
一口お茶を飲んだ途端、すっぱそうな顔をしている。
「そんなにすっぱくはない、はずだが」
「その能力があるのに、あの仕事をあえてやっているのは何故なんだ」
「その場に行けば、より多くの情報が得られる。それに未来に残すべきものだと判断したからだ」
「命がけで、貴方がそこまでしなくてもよかったじゃないか」
「命がけ?そんなつもりは無い、最初あの状態の自分に何が起こるか予測がつかなかったのだ」
「そうか。もうあの仕事はしないしな。貴方も今は少し良い状態ということだ」
「そのとおりだ」
リゲルは、ニヤッ!と笑いながらガードを解いた。空間が一瞬揺らぎ、エネルギーによる圧迫を感じた。
『くくっ、過小評価だ』と笑いながら伝えた。
リゲルは驚いたような顔をしたが、次ぎの瞬間、さっきとは比べものにならないエネルギーを全身に感じた。それはリゲル特有のとても気持ちの良いパワーだったが、同時にここの調整もしなけければならなかった。
「大丈夫か? 自分の星でもこんな事はした事が無いよ。騒ぎになるからな」
「一瞬圧迫感はあったが、適応範囲内だよ」
「本当に負担にならないか?一瞬の圧迫感だけで適応って、どこまで上がるんだ?なんだかこんな気分は初めてで嬉しくなる。でも俺は、目眩はさせないだろう」
小さく頷くと
「そうだな。しかし最初でいきなり、空間が揺らぐほど上げるか?普通危険だろう。まったく。くくくっ」
「それで過小評価と言ったじゃないかぁ!常に周りを意識して生活しているから、お互いに、本来の自分の普通の状態が、どのくらいか分からないわけか?すげぇ、はははっ!」
「この、、、。コンタクト取るために普段からOFFでギリギリの状態だ」
とリゲルの瞳を見つめて言った。
「この、何?」と言って、リゲルは少し首をかしげたままOPENにして私を見ている。彼も私も互いに対する警戒感など存在しない。
「いや、なるべく目眩が起らないようにだな」と笑って答えた。
僅かだがリゲルの目の色がめまぐるしく変化し続けて、その大きく美しい緑色の瞳は、一瞬別の色に変わったように見えた。
情報をどこまで理解したのか、リゲルほど私をワクワクさせる存在はいない。
私の方もリゲルのとてつもないパワーを含む、尊敬すべき個性の一部に触れた。
その夜遅くまで湖に面したバルコニーで、夜空に浮ぶ神秘的な輪と、無数の小さな金の流れ星を鑑賞しながら、氷河のかけらの入ったグラスを片手に、静かな時をすごした。
「まるで花火の雨のようだな。これほど降り注いで、どうやって外と行き来しているんだ?」
「ほんの塵だ。バリアをはっているし、たとえぶつかっても問題はない塵だ」
「そう?結構派手に見えるけど」
「そう毎晩見ていても飽きない。流れ星の監視システムは早くから発達しているし、人々は感知する能力があるからね。たとえ地上に落ちてくるような物があったとしても、それまでに、除去するか、逃げている」
「あぁそうだった。良いな、、、毎晩全天で金の流れ星か」
たまに吹いてくる夜風に乗って、どこかで小さな虫の声がする。
「これ、すごく美味いけど、何杯も飲むもんじゃないんだ。結構効くな」
手に持ったグラスを覗き込んでいる。
「そうか?リゲルが珍しい体質なんだろう。そろそろ中へ入ろう」
リゲルもあの後の緊張が解れたのであろう。
リビングにもどると「ここすごく気に入った」と言うと、フカフカ絨毯の上にその巨体を横たえた。
「暖かいなぁ。ここで寝ても良いかな?」
「ベッドの用意ができるのにか?」
[俺でかいから、床に寝るのに慣れているんだ。とても暖かくてフカフカで狭いベッドより最高に快適だ。ん〜良い気持ち、お休み」
少しすると規則正しい寝息が聞こえた。
私も休むことにしよう。
*
「おはよう」私の声でリビングの窓が開く、早朝の清々しい空気を吸った。鳥達が挨拶にきていた。
まだ恒星は低い位置に1つしか出ていない。輪が淡い虹のように輝いて見える。
湖の水際まで続く庭に小さな花が出迎えてくれたかのようにこの家の周りに咲いている。
「こっちへこないか?」
「あぁー、貴方が観ているのが俺に伝わっているよ」と言いながら、リゲルはバルコニーに出てきた。
「今朝の目覚めはどうかな?」
「最高に気分良いよ、いやぁ〜本当に綺麗だな。開放された心の気持ち良さが分かる気がするな。ちょっと昨日のことを考えていた。説明がつかない混沌さが残っているような感じだ」
「それでいい。必要な時に使えるようなら、たいしたものだ」
「そういうものなのか。ところで夜中に目が醒めたら、居なかったようだがどこへ?」
「別の空間へ行っていたほうが周りへの影響を考えずにゆっくり休めるからね」
「寝室が異空間?やっぱり変っているな」
これは私に対する否定ではなく、リゲルの理解の表し方だ。
リビングへ戻ると、数十秒後テーブルの上には私とリゲルの為に別々な朝食が用意された。
「俺が付いてきてよかったのか?体調はどうだ」
「リゲルの気持ち良いパワーに触れているから体調もいい。寝室はここよりも更に自由でいられる。そのうち連れて行こう、きっと自分にビックリする」
「この状態で貴方に役立っているというのか?こんなにも違う存在なのに。初めての体験だらけで、自分にビックリしている暇なんか無いな」
「リゲルの方も興味を持ってくれたかな?」
「興味を持つも何も、時々同じ人という種に入れていいのかと思うよ」
「同じ人という種?自分の生れた星に連れてきた巨人に言われたくないな。
くくっ、しかしこうしてリゲルの美しい瞳の変化を見てすごすのは、本当に楽しい」
「シティでは貴方の瞳を”時に漆黒宇宙のように見えるその瞳は、人々を宇宙まで連れ出す”と言われているけど、ジッと覗かれると抵抗できる者は、いないな」
彼は一瞬表情がなくなったように見えたが
「遠慮しないで、好きな物を食べてくれ」と言って、柔らかに微笑むと
「でた!それがまた美しく見惚れるって女性陣が騒ぐんだよな」
「良いから、早く食べろ!」
「はいはい。美味そうだ、いただきます」
美味いを連発したリゲルは、大きなグラスの水を口にすると、一瞬驚いたような顔をして一気に飲んだ。
「う、美味〜い!この水美味い!」
「この周りの高い山々と深い森が年月をかけて作る、湖の底に懇々と湧く水だよ」
「へぇ〜感激だな」
リゲルがグラスをテーブルに戻した瞬間、水が満たされた。
「いいなぁこれ!」リゲルは子供のように嬉しそうだった。
「まるで俺が休養を取らせてもらっているようだ。ところで少し開放していいと言うことは、この家の中と外は別の空間ということか?」
「船を下りてから直接湖にも行ったし、バルコニーから出て湖にも行っただろう。何か違和感あったか?」
「いや、違和感とは違うが、ここの美しさに感動しただけじゃない、なにか高揚感があったが」
「ん、ここはいくつかが重なり合った状態になっている。外からは発見できない。多重空間のようなものだ」
「へぇ多重空間のような場所が、貴方の隠れ家というわけだな」
「そうとらえてもいい」
「はははっ、そうして置く。その多重空間の向こう側に寝室か、、、」
「その質問の答えは、そのうち行けば解るだろう」
白い透かし模様のカーテンを僅かに揺らして、湖の湿気を含んだ風が、ほのかに花の甘い香りを運んで来る。
日差しが少しずつ強くなり、白い絨毯が眩しそうに光をあびていた。
リゲルと共に私の星に行く、同行許可が出た。
我が家にいる間だけでも、少しリラックスさせてもらおう。
輪の外にある宇宙港に暗証コードを使って連絡を入れた。
[別ルートにて直行・こちらからコンタクトを取るまで完全OFF]
[暫くお待ちください]
これだから、シップで帰るのは面倒でいやなのだ。入港規約改正を申し出よう。
『私だ直行する。完全OFFだ 解るな』
『アッ、はい!失礼致しました。コンタクトを、お待ちしております』
『よろしい』
私の船はりゲルには狭い、我々に合った船を新しく作らせよう。直行便登録をして(笑)
移動に乗り物が無くても良いが、緊急事態に対応する為にシップは必要だ。
「さあ、送ってもらおうか?」
「おい!連れて行ってくれるんじゃないのか?俺じゃ、入れないぞ」と困ったように笑った。
「くくっ、一瞬で着く」
「O、Nか、、な、何度経験しても慣れる事はないな」
「リゲル、どこを見ている?ここだよ」
ゆっくり周りを見回して
「あ〜嘘だろ〜、、、イメージが違った」
壁のように高く山頂に雪をかぶった山々に囲まれた、高原の美しい湖のほとりに我が家はある。
「そう?ジャングルを越えて山の洞窟の奥深くにある家か?」
そう言いながら船を下りた。
「気持ちのいいところだな〜。山も湖も本当に綺麗だ」と言いながら深呼吸して
「?あっ!空気が、俺の周りの空気は俺の星のものか?」気がついたようだ。
「そう、いいもてなしだろう」
「良い、肺の細胞が喜んだ!」
「くくっ」
そのまま歩きながら水際へ来ると、向こうから3羽大きな白い水鳥がやって来た。
「ひさしぶりだね」と彼が声をかけた。
頭を下げるようにして、嬉しそうによってきた。
『リゲルは、私の大切な友人だ』と私を紹介している。
すると水際までバシャッ、バシャバシャッ!!と魚達が集まってきた。
「どこへ行っても周りに人といわず、あらゆる生き物が寄ってくる。なんか楽しくなってくるよな」
「昔からね」
「ここでは私がコンタクトを取るまで静かに休める。さあ、私の家へ。リゲルにもくつろげると思う」
一見して質素で小さな建物だった。巨人りゲルから見ると物置程度の大きさだ。
正面の壁だったところに、スーッと筋が入って音も無く入口が開いた。
「まるでシェルターの入口じゃないか」
「ビックパワーのプライベート・ルームみたいなもんだ」
「なるほどね」
中へ入ると外観とはまったく異なり、充分な広さがあった。
[お帰りなさいませ]とどこからとも無く、柔らかな声がした。
バルコニー側の全面が、大きな透明の扉で、外に広がる景色を満喫できた。
「!このリビングからの景色は、まるで絵だなぁ」
「刻々と変化する絵画と言うところだろう。ところで何か飲み物は?」
「アンドロイドでもいるの?」
「いや。今は木苺の時期だな。木苺とミントのお茶も口がすっきりする」
「あぁ、そうか、、え?」
テーブルの上にお茶と、木苺のチョコが。
「この家全体が、客をもてなしてくれる」彼が微笑みながら言った。
「、、、すごいな。なるほど滞在区は、お客が喜ぶように出来ている訳だ」
「ここは私の家だ。滞在区はこことは違う。後で連れて行こう」
「!滞在区以外に、私を連れてきて大丈夫なのか?」
リゲルは少し驚いて言った。
「私の家だから問題ないし、私がコンタクトを取らない限り誰にも分からない。ここでは私もONでもOFFでもない。少し開放の状態でいられる。リゲルも私が目を回さない程度にガードをはずせ」とニヤニヤしながら言った。
リゲルは、やっと私の変化に気が付いたようだ。
「本当に不思議な能力の持ち主だな。普段は我々に合わせているわけなんだ」
「そう、ある程度合わせている。でもそれはリゲルも同じだろう。私は他より少しばかり心が柔軟なだけだ。宇宙は常に変化し続けるが不変の法則と真の自在そのものだ。そして君も私も本来自在のだ」
「あなたを見ていると本当なんだと思うよ」と美しいエメラルド色の瞳を輝かせて私を見つめている。
「ところで御曹司というわけでもなさそうだし、星ではいったい?」
「外の世界で多くのことを学んだ。役立つ新しい情報は、すべてこの星のデーターに課題として保存と選択・活用をしている。そしてこの星だけでなくこの世界で役に立てたいと思っている」
「えっ?情報収集が仕事なのか?」
「くくっ、この星で情報を仕事にする者はいないよ。知ろうとすればその人の能力に応じていくらでもできるのだから。それらの情報を最小の形でどれほど多く残し、それぞれに役立てるかは、歴史的日常だ」
「頭に他の人より遥かにでかい倉庫を持っているようなもんか」
と言いながら笑っている。彼の頭の中には、巨大な頭の私がいた。
「おい!それは酷すぎる。宇宙の情報は宇宙に置いておくし、リゲルの情報は君が持っている。それでいいのだ」
「はぁ?どういう事?」
彼は静かに微笑むと
「知りたいか?巨大コンピューターをいくつも用意する必要が無いぞ。くくくっ」
「それって、また少し目眩のするやつか」と少し嫌な顔をした。
「?どういう事だと聞いたのは、お前だろう」
「ん」
一口お茶を飲んだ途端、すっぱそうな顔をしている。
「そんなにすっぱくはない、はずだが」
「その能力があるのに、あの仕事をあえてやっているのは何故なんだ」
「その場に行けば、より多くの情報が得られる。それに未来に残すべきものだと判断したからだ」
「命がけで、貴方がそこまでしなくてもよかったじゃないか」
「命がけ?そんなつもりは無い、最初あの状態の自分に何が起こるか予測がつかなかったのだ」
「そうか。もうあの仕事はしないしな。貴方も今は少し良い状態ということだ」
「そのとおりだ」
リゲルは、ニヤッ!と笑いながらガードを解いた。空間が一瞬揺らぎ、エネルギーによる圧迫を感じた。
『くくっ、過小評価だ』と笑いながら伝えた。
リゲルは驚いたような顔をしたが、次ぎの瞬間、さっきとは比べものにならないエネルギーを全身に感じた。それはリゲル特有のとても気持ちの良いパワーだったが、同時にここの調整もしなけければならなかった。
「大丈夫か? 自分の星でもこんな事はした事が無いよ。騒ぎになるからな」
「一瞬圧迫感はあったが、適応範囲内だよ」
「本当に負担にならないか?一瞬の圧迫感だけで適応って、どこまで上がるんだ?なんだかこんな気分は初めてで嬉しくなる。でも俺は、目眩はさせないだろう」
小さく頷くと
「そうだな。しかし最初でいきなり、空間が揺らぐほど上げるか?普通危険だろう。まったく。くくくっ」
「それで過小評価と言ったじゃないかぁ!常に周りを意識して生活しているから、お互いに、本来の自分の普通の状態が、どのくらいか分からないわけか?すげぇ、はははっ!」
「この、、、。コンタクト取るために普段からOFFでギリギリの状態だ」
とリゲルの瞳を見つめて言った。
「この、何?」と言って、リゲルは少し首をかしげたままOPENにして私を見ている。彼も私も互いに対する警戒感など存在しない。
「いや、なるべく目眩が起らないようにだな」と笑って答えた。
僅かだがリゲルの目の色がめまぐるしく変化し続けて、その大きく美しい緑色の瞳は、一瞬別の色に変わったように見えた。
情報をどこまで理解したのか、リゲルほど私をワクワクさせる存在はいない。
私の方もリゲルのとてつもないパワーを含む、尊敬すべき個性の一部に触れた。
その夜遅くまで湖に面したバルコニーで、夜空に浮ぶ神秘的な輪と、無数の小さな金の流れ星を鑑賞しながら、氷河のかけらの入ったグラスを片手に、静かな時をすごした。
「まるで花火の雨のようだな。これほど降り注いで、どうやって外と行き来しているんだ?」
「ほんの塵だ。バリアをはっているし、たとえぶつかっても問題はない塵だ」
「そう?結構派手に見えるけど」
「そう毎晩見ていても飽きない。流れ星の監視システムは早くから発達しているし、人々は感知する能力があるからね。たとえ地上に落ちてくるような物があったとしても、それまでに、除去するか、逃げている」
「あぁそうだった。良いな、、、毎晩全天で金の流れ星か」
たまに吹いてくる夜風に乗って、どこかで小さな虫の声がする。
「これ、すごく美味いけど、何杯も飲むもんじゃないんだ。結構効くな」
手に持ったグラスを覗き込んでいる。
「そうか?リゲルが珍しい体質なんだろう。そろそろ中へ入ろう」
リゲルもあの後の緊張が解れたのであろう。
リビングにもどると「ここすごく気に入った」と言うと、フカフカ絨毯の上にその巨体を横たえた。
「暖かいなぁ。ここで寝ても良いかな?」
「ベッドの用意ができるのにか?」
[俺でかいから、床に寝るのに慣れているんだ。とても暖かくてフカフカで狭いベッドより最高に快適だ。ん〜良い気持ち、お休み」
少しすると規則正しい寝息が聞こえた。
私も休むことにしよう。
*
「おはよう」私の声でリビングの窓が開く、早朝の清々しい空気を吸った。鳥達が挨拶にきていた。
まだ恒星は低い位置に1つしか出ていない。輪が淡い虹のように輝いて見える。
湖の水際まで続く庭に小さな花が出迎えてくれたかのようにこの家の周りに咲いている。
「こっちへこないか?」
「あぁー、貴方が観ているのが俺に伝わっているよ」と言いながら、リゲルはバルコニーに出てきた。
「今朝の目覚めはどうかな?」
「最高に気分良いよ、いやぁ〜本当に綺麗だな。開放された心の気持ち良さが分かる気がするな。ちょっと昨日のことを考えていた。説明がつかない混沌さが残っているような感じだ」
「それでいい。必要な時に使えるようなら、たいしたものだ」
「そういうものなのか。ところで夜中に目が醒めたら、居なかったようだがどこへ?」
「別の空間へ行っていたほうが周りへの影響を考えずにゆっくり休めるからね」
「寝室が異空間?やっぱり変っているな」
これは私に対する否定ではなく、リゲルの理解の表し方だ。
リビングへ戻ると、数十秒後テーブルの上には私とリゲルの為に別々な朝食が用意された。
「俺が付いてきてよかったのか?体調はどうだ」
「リゲルの気持ち良いパワーに触れているから体調もいい。寝室はここよりも更に自由でいられる。そのうち連れて行こう、きっと自分にビックリする」
「この状態で貴方に役立っているというのか?こんなにも違う存在なのに。初めての体験だらけで、自分にビックリしている暇なんか無いな」
「リゲルの方も興味を持ってくれたかな?」
「興味を持つも何も、時々同じ人という種に入れていいのかと思うよ」
「同じ人という種?自分の生れた星に連れてきた巨人に言われたくないな。
くくっ、しかしこうしてリゲルの美しい瞳の変化を見てすごすのは、本当に楽しい」
「シティでは貴方の瞳を”時に漆黒宇宙のように見えるその瞳は、人々を宇宙まで連れ出す”と言われているけど、ジッと覗かれると抵抗できる者は、いないな」
彼は一瞬表情がなくなったように見えたが
「遠慮しないで、好きな物を食べてくれ」と言って、柔らかに微笑むと
「でた!それがまた美しく見惚れるって女性陣が騒ぐんだよな」
「良いから、早く食べろ!」
「はいはい。美味そうだ、いただきます」
美味いを連発したリゲルは、大きなグラスの水を口にすると、一瞬驚いたような顔をして一気に飲んだ。
「う、美味〜い!この水美味い!」
「この周りの高い山々と深い森が年月をかけて作る、湖の底に懇々と湧く水だよ」
「へぇ〜感激だな」
リゲルがグラスをテーブルに戻した瞬間、水が満たされた。
「いいなぁこれ!」リゲルは子供のように嬉しそうだった。
「まるで俺が休養を取らせてもらっているようだ。ところで少し開放していいと言うことは、この家の中と外は別の空間ということか?」
「船を下りてから直接湖にも行ったし、バルコニーから出て湖にも行っただろう。何か違和感あったか?」
「いや、違和感とは違うが、ここの美しさに感動しただけじゃない、なにか高揚感があったが」
「ん、ここはいくつかが重なり合った状態になっている。外からは発見できない。多重空間のようなものだ」
「へぇ多重空間のような場所が、貴方の隠れ家というわけだな」
「そうとらえてもいい」
「はははっ、そうして置く。その多重空間の向こう側に寝室か、、、」
「その質問の答えは、そのうち行けば解るだろう」
白い透かし模様のカーテンを僅かに揺らして、湖の湿気を含んだ風が、ほのかに花の甘い香りを運んで来る。
日差しが少しずつ強くなり、白い絨毯が眩しそうに光をあびていた。




