<遥かなる時の流れ一瞬を生きる生命としてここに>
エピソード3 詩人
*
多くの惑星を従えて、無数の生命と文明を育ててきた、巨大な恒星があった。
彼はその中の一つの惑星に意識をむけていた。
*
今日は月が一つも出ていない。
満天の星の輝きはいっそう美しく、足元の淡い光の中、二人の人影が。
一人は深い緑の生地に、金糸の細やかな刺繍の施されたローブを羽織り、中は装飾のない白く薄い布を、幾重にも巻いているようだった。
耳と胸元には金の飾りが幾重にも、そこでの身分の高さを示していた。
身長は189cmほどだろうか、しかし長いローブがその体の痩せた姿を隠し、顔には明らかに疲労がでて今夜の闇の中に隠されていた。
「子孫に滅亡という未来しかないというのは辛いものだな。人心が荒廃してその日を待たずして滅亡するだろうと実しやかに、一部ではあるがメディアも伝えている。そしてそれを根底から覆す根拠ある提示もできない。遅くとも50年後には第一陣が流浪の民としてこの恒星系を出るか、、、。それでも未来の安息は遥か先にあるのだろうか。旅の詩人よ、どう思う」
「多くの場合、生命を育ててきた恒星の最後の瞬間にその子等が遭遇することがありません。それ以前に終わるからです」詩人が応えた。
「まるで見て来たようにいうではないか。詩人は時空を超えて旅をするといっていたな。ならば我々の最後も見てきたか?」
詩人は僅かに首を振った。見たとも見ていないとも受け取れる。
「それで?」
「宇宙も時には、規則正しく運行するばかりでなく奇跡も起こします。いや宇宙こそ奇跡そのものとも言えるでしょう」
「宇宙こそ奇跡か。そう、正にその通りなのだろう。しかしそれは我々の世界に起こるだろうか?」
「すでにここは奇跡の銀河」
満天の星の下心地よく吹く夜風は、詩人の腰までとどく美しい紺色の髪を優雅になびかせた。
何故か暗い夜にもかかわらず、黒髪ではなく見たことも無い美しい光沢のある紺色の髪の毛だとわかる。王は自然を笑みが零れる自分に気が付き驚いたが、今夜はこの忘れがたい瞬間を楽しもうと思った。
「奇跡、、、そうだな。詩人よ、そちがその奇跡であろう」
「いいえ、すべての生命達こそ、宇宙の愛する奇跡なのです」
「宇宙に愛されて?壮大だな。その愛は我々の太陽の寿命を伸ばしてはくれまいか」
「恒星に若さを取り戻すには、燃え尽きてしまったものを足せば良いのです」
王は豪快に笑った。
「はははっ!詩人よ。なんとも簡単に言う。宇宙の奇跡とはそういうものか」
「バランスも変わってしまっていますが、さほど難しいことではないでしょう」
「そうか。そんな事が出来る文明も宇宙のどこかにあるのだとしたら、悩む事もあるまいな」
「恒星ほど長生きをするヒューマン種と、その文明には出合った事がありません。知る限り最も長寿な人は私の大切な友です。彼らならばここの今の状況を本気で考える事でしょう」
「ほぉ、してその友は幾つだ?」
「推定1万年は生きています」
「一万年!人がか?まさに奇跡だな、、、」
王は真上の星空を見上げた。
「子供たちに、子孫たちに夢を持たせたい。生きる希望を、、、、宇宙を旅する詩人にとって、ありふれているだろうがな」
「生命達の思いは同じ、ありふれているなどという事はありません。思いは存在に力を与え方向性を持ちます」
「詩人の言う事は私には分からない事が多いが、不思議と心が癒され安息を得る。貴方を皆に会わせたいと思うがこの恒星系に散らばった107億の人々では限度もあるな」
「安息だけでは未来には足りません。未来を切り開くには希望と勇気が必要です」
「そうだな。偽りの希望でもないよりはましだろうか」
「真実にするのです!」
「ん?、、、真実にするのか。しかし科学者たちには、恒星から届く情報を見れば、真実か偽りかはあまりに明確であろう。すでにその事実を多くの人々が知りはじめたが?」
「では、ここの生命達はどの真実を望むのですか?」
「どの?!もちろん生きる希望の持てる真実を望む!詩人よ、貴方は、、、貴方は神か?」
「いいえ違います。そのような存在ではありません。できることと出来ない事があります。残念ながら、この満天の星の輝きの数ほど、言いようの無い悔しさと哀しさも味わいました。そして全宇宙をも揺り動かすかと思うほどの、愛と喜びを知りました」
王はあらためて暗闇の中で、まるでまぶしい物を見るかのように詩人を見あげた。
詩人の目にはまるで夜空が映りこんだかのように、無数の金の星があった。
それはまるで銀河を外から見ているかのような錯覚を覚える。
「、、、なんと美しい、その宇宙のような目ですべてを見てきたですね」
王は初めて言葉をかえた。
「すべてではありません。常に変化しながら接しています。いろいろと見てきましたが、ここに訪れる最後の時はまだまだ先の事、未来は貴方たちの中にあります」
「、、そうですか。私は希望を捨てません。いや、私たちは未来に希望を繋げ生きていくと決めました」
「良かった。きっと更なる繁栄の時を刻み、子孫は誇りを持って銀河に生きていく事でしょう」
「銀河に、、、そうですね。この星空に私たちの未来があるのですね」
「その時は私も、またこの銀河に来ましょう。新時代の次の一歩に為に、何か役にたちたいと思います」
「なんと、本当にいらして頂けるのですか!これより心強いことはない。ありがとうございます。私は必ず後世に伝えてまいります」
詩人の美しく優しい微笑みに、王は見蕩れていると、一陣の風と共に詩人はスーッと消えてしまった。風に頬が冷たく感じ、はじめて自分がなんともいえない感動に、涙を流している事に気が付いた。
『これ以上の人心の荒廃などさせません。足下の現実を乗り越え、夢を語り継ぎましょう。私は希望をけして捨てる事はありません』
王は満天の星を見上げ、目の奥に焼き付いた美しい微笑みに誓った。
エピソード3 詩人
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多くの惑星を従えて、無数の生命と文明を育ててきた、巨大な恒星があった。
彼はその中の一つの惑星に意識をむけていた。
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今日は月が一つも出ていない。
満天の星の輝きはいっそう美しく、足元の淡い光の中、二人の人影が。
一人は深い緑の生地に、金糸の細やかな刺繍の施されたローブを羽織り、中は装飾のない白く薄い布を、幾重にも巻いているようだった。
耳と胸元には金の飾りが幾重にも、そこでの身分の高さを示していた。
身長は189cmほどだろうか、しかし長いローブがその体の痩せた姿を隠し、顔には明らかに疲労がでて今夜の闇の中に隠されていた。
「子孫に滅亡という未来しかないというのは辛いものだな。人心が荒廃してその日を待たずして滅亡するだろうと実しやかに、一部ではあるがメディアも伝えている。そしてそれを根底から覆す根拠ある提示もできない。遅くとも50年後には第一陣が流浪の民としてこの恒星系を出るか、、、。それでも未来の安息は遥か先にあるのだろうか。旅の詩人よ、どう思う」
「多くの場合、生命を育ててきた恒星の最後の瞬間にその子等が遭遇することがありません。それ以前に終わるからです」詩人が応えた。
「まるで見て来たようにいうではないか。詩人は時空を超えて旅をするといっていたな。ならば我々の最後も見てきたか?」
詩人は僅かに首を振った。見たとも見ていないとも受け取れる。
「それで?」
「宇宙も時には、規則正しく運行するばかりでなく奇跡も起こします。いや宇宙こそ奇跡そのものとも言えるでしょう」
「宇宙こそ奇跡か。そう、正にその通りなのだろう。しかしそれは我々の世界に起こるだろうか?」
「すでにここは奇跡の銀河」
満天の星の下心地よく吹く夜風は、詩人の腰までとどく美しい紺色の髪を優雅になびかせた。
何故か暗い夜にもかかわらず、黒髪ではなく見たことも無い美しい光沢のある紺色の髪の毛だとわかる。王は自然を笑みが零れる自分に気が付き驚いたが、今夜はこの忘れがたい瞬間を楽しもうと思った。
「奇跡、、、そうだな。詩人よ、そちがその奇跡であろう」
「いいえ、すべての生命達こそ、宇宙の愛する奇跡なのです」
「宇宙に愛されて?壮大だな。その愛は我々の太陽の寿命を伸ばしてはくれまいか」
「恒星に若さを取り戻すには、燃え尽きてしまったものを足せば良いのです」
王は豪快に笑った。
「はははっ!詩人よ。なんとも簡単に言う。宇宙の奇跡とはそういうものか」
「バランスも変わってしまっていますが、さほど難しいことではないでしょう」
「そうか。そんな事が出来る文明も宇宙のどこかにあるのだとしたら、悩む事もあるまいな」
「恒星ほど長生きをするヒューマン種と、その文明には出合った事がありません。知る限り最も長寿な人は私の大切な友です。彼らならばここの今の状況を本気で考える事でしょう」
「ほぉ、してその友は幾つだ?」
「推定1万年は生きています」
「一万年!人がか?まさに奇跡だな、、、」
王は真上の星空を見上げた。
「子供たちに、子孫たちに夢を持たせたい。生きる希望を、、、、宇宙を旅する詩人にとって、ありふれているだろうがな」
「生命達の思いは同じ、ありふれているなどという事はありません。思いは存在に力を与え方向性を持ちます」
「詩人の言う事は私には分からない事が多いが、不思議と心が癒され安息を得る。貴方を皆に会わせたいと思うがこの恒星系に散らばった107億の人々では限度もあるな」
「安息だけでは未来には足りません。未来を切り開くには希望と勇気が必要です」
「そうだな。偽りの希望でもないよりはましだろうか」
「真実にするのです!」
「ん?、、、真実にするのか。しかし科学者たちには、恒星から届く情報を見れば、真実か偽りかはあまりに明確であろう。すでにその事実を多くの人々が知りはじめたが?」
「では、ここの生命達はどの真実を望むのですか?」
「どの?!もちろん生きる希望の持てる真実を望む!詩人よ、貴方は、、、貴方は神か?」
「いいえ違います。そのような存在ではありません。できることと出来ない事があります。残念ながら、この満天の星の輝きの数ほど、言いようの無い悔しさと哀しさも味わいました。そして全宇宙をも揺り動かすかと思うほどの、愛と喜びを知りました」
王はあらためて暗闇の中で、まるでまぶしい物を見るかのように詩人を見あげた。
詩人の目にはまるで夜空が映りこんだかのように、無数の金の星があった。
それはまるで銀河を外から見ているかのような錯覚を覚える。
「、、、なんと美しい、その宇宙のような目ですべてを見てきたですね」
王は初めて言葉をかえた。
「すべてではありません。常に変化しながら接しています。いろいろと見てきましたが、ここに訪れる最後の時はまだまだ先の事、未来は貴方たちの中にあります」
「、、そうですか。私は希望を捨てません。いや、私たちは未来に希望を繋げ生きていくと決めました」
「良かった。きっと更なる繁栄の時を刻み、子孫は誇りを持って銀河に生きていく事でしょう」
「銀河に、、、そうですね。この星空に私たちの未来があるのですね」
「その時は私も、またこの銀河に来ましょう。新時代の次の一歩に為に、何か役にたちたいと思います」
「なんと、本当にいらして頂けるのですか!これより心強いことはない。ありがとうございます。私は必ず後世に伝えてまいります」
詩人の美しく優しい微笑みに、王は見蕩れていると、一陣の風と共に詩人はスーッと消えてしまった。風に頬が冷たく感じ、はじめて自分がなんともいえない感動に、涙を流している事に気が付いた。
『これ以上の人心の荒廃などさせません。足下の現実を乗り越え、夢を語り継ぎましょう。私は希望をけして捨てる事はありません』
王は満天の星を見上げ、目の奥に焼き付いた美しい微笑みに誓った。




