遥かなる:エピソード2 ガッシュ

  • 2008/03/29(土) 01:52:13

             遥かなる:エピソード2−1  ガッシュ
                  
                      *

目の前に大小2つの渦巻き銀河の、腕の先が絡み合っていた。
この二つの銀河の将来は衝突銀河となっていくであろう。
しかしそれ以前に、それぞれの銀河で発達した高度文明同士が衝突をしていた。

『ガッシュ、それぞれの文明に入り、衝突をさけするように働きかけようと思うが』
揺らめく光がガッシュに話しかけた。
『分かりました。どちらに?』
『では大きな銀河の方に潜入しよう』彼はフッと消えた。

                      *

ガッシュは、もう一つの銀河の文明の中心とも言うべき、惑星連邦中央政府のある、
デール星中心都市から、220kmほどの歓楽街の地下都市ゼットへ向かった。
いかにも怪しい場所に情報は集まるものだ。

蒸し暑い、濁った異臭のある空気がよどんでいる。
入り組んだ違法建築物と、地下街の道路の雑踏を避け、人工灯の切れた暗い裏路地にガッシュは現れた。
足元の水溜りは油が浮かび、何やら得体の知れない物がウジャウジャ蠢いている。
『おっと!酷い所に出ちまった』


向こうに見える雑踏の中へ出るには、とある惑星の太古の神話彫刻のように
均整の取れた美丈夫のガッシュではあまりに浮いた存在に見える。

肩甲骨下まで伸び、美しくウェーブのかかったブラウンの髪の毛を、
ここの住人の多くのように黒くし、わざとくしゃくしゃとして顔をかくす。
乱れた髪のその間から、強い意志のある琥珀色の目が行きかう人々を見た。
ガッシュの持つパワーの光を消しても尚、すべてが目立つ存在だった。

『ん?、、まぁ、いいか』

人々でごった返している道に出ると、さらに地下へと続く移動ポッドのある左へ歩き出した。
他の星からの移住者か、お尋ね者として逃げてきたものなのか、ここにいる人種はさまざまだった。

少しすると後ろからついて来る者がいた。
『さっきのか、、、』

突然足を止め振り向くと120mほど離れた所の男と視線が合った。、視界に入る人々よりさらに頭一つ背の高い。

『珍しいな。いきなりあんなところに人が降って沸くとは』とコンタクトしてきた。

ガッシュはあごで、建物の壁の方によるように合図すると数歩移動し、壁に寄り掛かると正面を向いて待っていた。
行きかう人々は、誰もがガッシュを意識していたにもかかわらず、視線を向けたりコンタクトしてくる者はいない。

『聞こえたんだな。あんた誰?、、、ほぉ』
後ろからついてきた者は、ガッシュの横顔に小さなため息をつく。
長い睫に琥珀色の瞳、二重の切れ長の目、高い鼻梁に形の良い唇
ほんの一瞬だったが、本当に見惚れていた自分に驚いて、壁を背にして正面を向いた。

『ここを行きかう奴らと同じ怪しい奴だよ』
『こういう会話に慣れているのも珍しい。どうやら髪の毛の下は、飛び切りの美人らしい』
『美人?女に言ってやれ!』
『あぁ男女共にこれほどの美人は見たことが無い。よそ者のようだが、これからどこへ?』

『美的感覚は文明によって違う。よそ者、ここはそんなのばかりだろうが。ここから19、、下に飲みに行く、良い店があるんだがそんなことを探るのが仕事か?』
『19?もっと下へ行くのかと思ったよ。丁度俺もそこへ行く所だった』

ガッシュはその男を無視するかのように、そのまま移動ポッドの入り口に向かって歩き出した。

移動ポッドの中は人ごみで、換気しているにも拘らず、汗と油とアルコール、薬品の匂いで、むせ返るようだった。

ガッシュに話しかけてきた人物もやたらに目立つ存在であったが、訳ありの人々はそれぞれが存在してないかのように無視するようにしていた。

ガッシュは、この狭い空間で巨人の部類にはいるほど背が高く、無駄の無い筋肉がその衣服の上からも分かる。数人がチラチラとガッシュを盗み見しているのが分かる。
ガッシュの美しさは、この腐ったような世界でも人の心を捉えるようだ。
覗きみた者が”ほぉ”と小さなため息付く、ひそひそと小声がもれ聞こえる。

ほんの数秒ガッシュと共にいた人々は、誰もその存在の本当の仕事は何かを知るものもいない。
殆どの人が体のあちこちにいろいろな病を抱えていた。

『、、病院は表の世界だけで、すべてが使い捨てか、、、ほろぶな』
ガッシュがそのポッドを出た時、その密室にいた人々の病は消えていた。

後ろからついて来る者を無視して、ガッシュは人ごみの中を少し行くと“J”と看板の出ている店にくぐるようにして入った。

やたらに目障りな電飾には、暗示作用があった。正面のカウンターにつくと手を置いた。
手を置く事で承認されるようになっている。

新客にカウンターの向こうに立ったアンドロイドの店員は、思いっきり作り笑いをした。
「これは珍しい!これほど極上の美人の巨人は初めてです。ははっ!失礼、ご注文は?」

「まったく、どいつも初対面にそういえば良いと思いやがって!それに巨人じゃなくて長身だ!一番強い酒はギガンか、ダブルで。それと本・物・のフレッシュジュースだ」

「本物?お客さんここにそんなものありませんよ」と言いながら笑っている。

「ある。金の心配か?」

「ギガンは地下、本物は地上のホテルと相場は決まっているんですがね」と、笑いながら疑い深そうな目でガッシュを見上げている。

「両方ならJの”楽園”だろ」
「良くご存知で。ではここにもう一度手を」

ガッシュが手を置くと奥の壁が開くとさらに扉があった。
「どうぞごゆっくり」
ガッシュが入っていくと同時に後ろの扉が閉じ、狭い部屋ごと移動しだした。

『約1300mか』

扉が開くと、前に高級ホテルのフロントのような服装のアンドロイドの女性が立っていた。
「ようこそ、デール星VIPの皆様の為の楽園へ。どうぞこちらにお乗りください」

ガッシュは小さなカートに乗り込むとスーッと動きだし、薄暗い中目まぐるしく色が変化するチューブの中を移動した。
『悪趣味な遊園地だぜ、どんなVIPだよ。微量の麻薬が気化してるな、これもサービスか?、、』

カートが静かに止まり巨大な扉が開くと、いきなり強烈な人口の光が眩しく目をくらませる。
『笑わせるなぁ、俺に光で目くらましか?!おっと一応変装用サングラスと』
内ポケットから出してかける。

「ようこそ楽園へ。こちらへどうぞ」
ほんの10mほどの良い香りのするトンネル状の中を通っていく
『ご丁寧な身体検査だな、、』「武器は携帯してないよ」と呟く

人工の真夏の太陽に照らされて、空気がむっと熱い。背の高い熱帯の植物が出迎えてくれた。
ビーチにはパラソルが並び、その向うに海まである。そこは良く出来た人工の常夏の楽園だった。

「どうぞ、ごゆっくりお楽しみください。ここからは彼女たちがご案内いたします」

細い帯状の生地を申し訳程度に、褐色の肌に巻きつけたアンドロイドの女性が微笑んだ。
「いらっしゃいませ。ギガンとフレッシュジュースを、ご用意してお待ちいたしておりました」

「飲み物にたどり着くまでが大変だな」
「申し訳ございませんでした。上で喉を潤してお出でではなかったのですね」
「良いんだ。楽しみにしていたからな」

屈んでパラソルの下に入ると砂地の上に整列している簡易ベッドに腰掛けた。
黒いジャケットを脱ぎ、白い半そでのスペーススーツの前を、ベルト代わりの布の上まで開けた。

やや日焼けした肌に汗一つかいていない。ウエストは帯のような白い布を巻いて、適当に結んで下げていた。見事に長い足には白のブーツがぴったりと合っているがここは常夏。
ブーツを脱ぐ、、、『先ずは喉を潤すだな』と思っていると、横に置いた上着をアンドロイドが取り、ベッドヘッドにかけて「御用がありましたら、こちらを押していただければ私が参ります。どうぞごゆっくり、おくつろぎください」

人工の青空と、目の前には海が広がる。時々涼しい風が不自然に熱い空気をかき混ぜていく。
喉を潤し、ベットに横になると大幅に足がはみ出しす為、片膝を立て足を組むと目をつむった。

『“ここの本物”のフレッシュジュースということか』
暫くここにいる1000人ほどの人々の発する情報を聞いていた。

全面戦争を考える馬鹿は軍部だけで、後は金の亡者たちと言うわけだ。現実が分っていない。地下1300mを超えるこんな所に、楽園を作った連中がわざわざ考えもしないかと、ガッシュは思った。

目を開けて左を見ると、小高い丘の上に人工の青空にはえる白い立派なホテルがあった。

外部に情報がもれる事のない構造になった会議室や個室があるのが分かる。ここに来てまでさらなる秘密厳守に思わず笑いがでた。
すると突然後ろから声をかけられた。さっきの後ろからつけて来た男だった。

9頭身の細身、日焼けした肌に黒髪を後ろで一つにしている。まっすぐの眉に黒目がシャープな印象で、周りの人々は一応にこの男を意識していた。その意識は好ましいものだけでなく、恐れもある事にガッシュはニヤッとした。

「おや?やはり。貴方は目立ちすぎる。立派な体をお持ちですね。超一流モデルか、傭兵といったところですか?」
「モデルと傭兵か極端だな。どっちもやった事はないが、待遇によるな」

「間違えなくどちらも出来ますね。今見ていたあの豪華なホテルにいる人たちの中には、とてつもない待遇で雇う言う人も結構いると思いますよ」

ガッシュは片眉を上げてその男を見た。
『上の会話と違って、ここに来ると話し方も変わるようだな』
「もちろん、ここはVIPだけの世界ですから」

『名前は?』
「失礼しました。情報活動をしているギム・レギンと言うものです」

『ほぉ〜、ここでは情報活動は、声に出して言える事なのか?』
「ここは楽園、秘密めいて、いろいろ面白いではないですか。ところで貴方は?」

『俺はガッシュ。行く末を案じて見に来た、よそ者というところだ。ふふっ』
「おや?本当の事を言っているように感じましたが?そんな事を言う人は初めてです。何処の人なのでしょうね」

『俺の情報は入力済みだろ』
「初めて来て頂いたことだけ分かっているようです。私はたまたま貴方が現れる瞬間を見てしまったので」
『見なかったことに出来ないのか?』
「もちろんほかに漏らしていません。”J”で許可を出したのも私です」
『なるほど、ありがとうと言うべきかな?ギム』
ガッシュはそれだけで又眼を瞑って黙ってしまった。

「ミスター・ガッシュ、暫くここのようですね」
『適当にして出て行くよ。ん?』
ガッシュは上半身を起こして、ギムの方を向いた。

『デール星や関係惑星のあらゆるVIP が来ているようだな。ホテルから数人がこっちを見ているが、ギムの知り合いか?』
「やはり特殊な能力を、これは本当に珍しい人に出会った」
『視線を感じることなど珍しくないだろ?あそこのVIPたちより、最初にコンタクトして来たギムの方が珍しい部類に入るだろ』
「ご謙遜を、ある意味神秘的とも言うべき特殊なオーラを感じますよ。私もこの狭い空間では珍しい方でますね」

『ん?今は消してあるはずだが。俺の容姿を見て勘違いする者が多い事は確かだ。さてとどうする?』
「では向こうへ」ギムは立ち上がりながら続けていった。
『モデルではなく、救世主として売り出す方が好都合かもしれません』

『やっぱり出るところを間違えたなぁ。できれば隠密に行動したかったんだが』

ギムは一瞬あっけにとられたが、吹き出すように笑った。
「はははっ!目立ちすぎです。私は好みにうるさいですし、一応初めての方にはそれなりの気配りをしているのですが、まったく何の情報もないのには、興味を持ったと言うところですね」と笑いながら歩き出した。

『始めて来たんだ情報がなくて当たり前だろ。ところでギムも種を超えて結構もてそうだが。人身売買もやっているのか?』

すると先を歩いていたギムが振り向いて
「種?人にはもてる方ですよ。今どき人身売買など。副業として人材派遣業もしています」 
『そうかモデル・傭兵・救世主何でもありだな。他の生き物にも好かれているのか?』
「動物にも好かれる?かまってやる暇が無いので」
『普段、人以外の種が側にいるだろう?俺もいろいろ種を越えるんで困る事がある』

ギムはガッシュを不思議そうに見上げた。
『私の仕事を手伝わせているのがいます。分かりましたか?ミスターは、どうも不思議だ。生き物を操る能力でしょうか?』
『操るどころか、困ってるんだ。能力じゃなくて、魅力だと思ってあきらめろと言われるがな。俺はこの世界では珍獣に値する正直者だぜ。話は向うでしよう』

「珍獣!?はははっ!正直者が珍獣は分かりますが、貴方のような美しい人が、はははっ」

『どうでもいいが良く笑うな。ここの空気の所為か?』
「ここはVIPの為の楽園ですから、ミスター」


ガッシュと男は、特殊素材でできた透明の3重の扉の中へ消えて行った。

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遥か:エピソード2−2 ガッシュ

  • 2008/04/30(水) 21:05:25

<遥かなるときの流れ、一瞬を生きる生命としてここに>
       
          エピソード2−2 ガッシュ

入り口でさらに体をスキャンされたのが分かった。
『何度も失敬だな』
「すみません。ここを通る者は、その都度なのです」

ホテル内は空調設備も行き届いて涼しい。
ホテルのスタッフは、急いで側まで来ると「ようこそお出でくださいました」と挨拶ををしたが、見上げたまましばし固まっている。

ギムは俺の顔を見ると笑いながら言った。
「無理も無い。特別室へご案内だ。Zへ」と言う。
スタッフはZと聞いたとたん、一人を残しをして会釈をすると下がった。

広い通路には毛足の長い見事な絨毯が敷き詰められ、両側の壁には見事な絵画が飾られ、所々に彫刻や美術工芸品が置かれ、さながら美術館のようだった。

少し歩くと広間でた。
その中心に古代人の見事な体格と存在感の立像があった。
ガッシュはわざとその横に並ぶと同じポーズを取って、笑いながら”なるほど”と言った。

「この惑星に出入りする人種に、この彫刻のような体をもった者は現存していません。先ほどスタッフが驚いたわけが分かりましたか?」
『こっちのモデル?』ガッシュは片眉を上げてギムを見ると、
「どちらも最上級で」と答えた。

移動ボッド空間の前で、スタッフが壁の前で手首をスッと動かすと扉が開いた。
「どうぞ」
中に入るとさらに地下へ移動しだした。壁面には次々と絵画が現れては消える。

『ちょっとした美術館だな。本物は大変な価値だろう。特別室という割りに眺めの良い部屋ではなさそうだな』
『眺め?確かに。しかしここの美術品はすべて本物と言う事になっています。なにもかもご存知なのですか?』
『ここの本物ね。Zと言われれば後が無い部屋と単純に思えるがな』
『そうですね。確かに分かりやすい。しかしガッシュから、逃げようと言う意思は感じられません』
『何故逃げる必要がある。ここは楽園だろ?』
「?そうでした。はははっ」

ギムはガッシュを見上げて首を小さく振った。
「どうやらとんでもない人と出会ってしまったようですね」
『俺が出る場所をちょっと間違えた所為だ。気にするな』
「あそこは間違えなく失敗でしたね」と言いながらギムは笑った。

スタッフは扉の方を向いていたが、ギムが笑う姿を見たことがないのか、
思わず覗き見をするように下からチラッと見た。

扉が突然消えて、とても地下とは思えない空間にでた。
『星の質量データーを誤魔化してまで、地下にこんな物を作らなくても、地上でやれば良いだろうに、御苦労なことだ』

スタッフはそのままこのフロアーに一歩も足を踏み入れずに、扉を閉め戻っていった。

二人が横にある移動チューブの入り口に立つと、足元に浮遊感がして先へ続くチューブの中を移動した。

『ギム、いつまで移動するんだ?特別室Zへ行くために、いつもこんな事しているのか?』

周りは目まぐるしく、チカチカと光が飛び交っている。

「この空間がZです。ガッシュにはもうこの空間にある物が何か分かっているのでは?」
『やたらに馬鹿でかい、情報入れだと思うが?』

「情報いれ?銀河連邦のスーパーコンピューターなど問題にならないのですよ。この”Z”は」
『いや〜、確かに馬鹿でかいな』

「”Z”がガッシュの情報に興味を持って、上にいたVIPより先にここへお連れしたのです」
『俺の?何も情報が無いのは許せないか?その他大勢の人にいれておけくのが一番良いと思うがな』
「ご冗談を」

スッと浮遊感が消えた。
「こちらへ」
『ふふっ』
「何か?」
『いや、好奇心旺盛な子供のような感情と視線を感じているよ』
ガッシュがそう言うと次の瞬間、空間の空気が冷たい機械的な物に変化した。

『ん?ご機嫌を損ねてしまったようだな』

「ガッシュ、普通隠して置く事まで、一々発信し無い方が身のためですよ。貴方ほどの美人は使いようによって、この銀河で最高の富を得ることができる。勿体無い」

『その美人というのは止めろ。俺の感覚に馴染まない。この銀河だけでなく、くっついた隣の銀河までもだろ?』
「私は見たままを言ったまで。これまでも最上級の美しい生き物を見てきたつもりですが?隣りの銀河とも事情にも詳しいようで、、、実は私もそう思っていたところです」
『美人というのを止めれば、ギムと良いコンビが組めそうだと思うがな』
「それは素晴らしい!願っても無いことです。はははっ」

その時、目の高さほどの空間に15人の顔が浮かんだ。
「ん〜、確かに美しい人種だな。ガッシュとやら何処から来た?」
一人の白い口ひげを蓄えた壮年が言った。

ガッシュは、ギムにテレパシーで聞いた。
『この場合本当の事を知らせた方が良いか?』
ギムは呆れたように『当然、知りたくてこうして集まったのです』

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遥か:エピソード2−3 ガッシュ

  • 2008/05/01(木) 00:47:34

<遥かなるときの流れ、一瞬を生きる生命としてここに>
       
               エピソード2−3 ガッシュ

ガッシュは頷くと
『隣りの銀河のスパイだと言うと面白いところだが、残念ながら他所の銀河からだ。詳しくどこかを知りたいなら、ここの宇宙全図を提示すれば、おおよその位置をしめせるが』

「宇宙全図?」
「そんなに遠くから有り得ん!移動方法は?」
「宇宙船はどうした?」
一斉にVIPの顔が話し出した。

ガッシュは腕を組んでギムを見ている。

ギムが右手を上げて手首をスッと動かすと、全面にこの銀河を中心とした宇宙図が現れた。
ガッシュは黙って、組んだ左腕の上の右人差し指で左端を指し、『その部分を最大深部まで』と伝えた。

ギムは一瞬驚いたようにガッシュを見たが、すぐ画面は別のぼやけた光の集まりに近づいていったが、最深部はこれ以上鮮明にはならない。

ギムがVIPたちに説明をした。

「この方向の宇宙最深部の画像でこれ以上鮮明にはならない。あの無数の小さな星に見えるのが一つの銀河だ。科学者達は銀河の生れる所”銀河の母”と呼んでいる。ガッシュここが?」

「馬鹿な!」
「何が言いたい!」

『あそこに良く似た所から来た。この宇宙全図には無いところだから、一番似た所を示した』

横にいるギムが一瞬雰囲気をさっと変えた。広い空間にエネルギーの圧迫を感じる。

ガッシュは片眉を上げてギムを見下ろすと
『おいおい!今更かよ。本当の事を知らせろと言ったのはギムだろうが相棒』

「相棒?!」他の顔たちが一斉にガッシュをギムを交互に見た。

『ガッシュ願っても無いとは言いましたが、それは別件での事。何処から来たという答えらしい物を提示してもらいたいものですね。”Z”が一斉に検索中ですよ』ギムがコンタクトして来た。
『あっ、そう。俺のとこの宇宙全図見せても、本物かどうかわからんだろう。最も近い適切な表現をしたと思うがな。この銀河の未来が良い方向へ行く為に手を結ぶなら、ギムを連れて行っても良いぜ』

ギムはあっけに取られたような顔を一瞬見せたがニッと笑った。
その顔に『本題は?』と。

ガッシュがつまらなそうに、顔を近づけ覗き込んだ。

「ガッシュの事が何も分からないまま、2つの銀河を征服しようと言っているように思えるのは変ですね」
『そりゃ間違っているだろう。事態は征服どころか双方の文明の崩壊、すべての生命の滅亡だぞ』

一瞬の沈黙と同時に巨大コンピューターの光も止まった。
『ギム?俺は嘘を言って無い』ガッシュはジッとギムを見つめている。

「ば!ばかな!」
「何を言っている!」
「そいつは敵のスパイだ。生かしておくわけにはいかない!!」
「やれ!”Z”殺せ!」
怒号が飛び交う中、”Z”は情報の光をパーっと広げて告げた。


[すべて真実であり、この銀河の未来が限られている事は明確になっている。よって計画は破棄され、最重要基本条項で生命の保存計画に移行する事を、すべての関係端末に伝えた]


「”Z”何を突然!貴様、プログラムに何かしたのか!」
口ひげの男が怒鳴った。

ギムの雰囲気は一気に変化し精神波が増大している。

『ギム、その位にしておけ。真実を見せてやるよ』
「いや、結構だ!私には分かっている。その上で、、、ガッシュ”Z”を元に戻せ!」

ガッシュはやれやれと呟くと、その体は眩い光に包まれていった。
ギムと他の顔たちも、眩しそうに目を細めた。

その時”Z”は
[生体エネルギー値変化予測不能、現在推定恒星ラタールのエネルギー値を、、、さらに変化、、、測定不能、、危険、ありえない、生き物ではない、、、危険!]

空間全体に警報が響き、ガッシュの光がバリバリと音を出し始めた。

ガッシュは我慢できないというように吹きだした。

『ぷっ、はははっ!いまさら危険はないだろう。知りたいっていうから、ほんの少し本来の姿に近い形で見せただけだぞ。”Z”パニくっているんじゃない!だいだい恒星と一緒にするかぁ?生き物ではないとは、失礼な奴だな』

ガッシュはギムの心に呼びかけた。
『両方の未来に希望を持ちたいと願っている。向うには俺を遥かに越えた存在が行って未来を繋いでいる。ここの組織はギムが潜入してここまでまとめたのだろう。今までの苦労を無にしない形で応援したい。この馬鹿でかいコンピューターと君で方向も違ってくるようだし、俺は役に立ちたいと思ってここまで来ている、、、分かるな』

ギムはガッシュの言う事が真実か見極めようとしていた。
『ギム真実を見せよう』ガッシュはそう言うと、ギムを連れてぶつかり始めた2つの銀河の全体を外から眺める位置まで飛んだ。

ギムは初めて見るその壮大な2つの銀河の光景に、感動と途方もない恐れに体を包まれたように感じて震えていた。

『命ある者にとってその感覚は正しい。未来は今刻々と崩壊に向かっている。その影響は最も近いところにある文明を持った惑星には、すでに出始めている。残念ながら銀河は周り、ここに影響が出始めるのは後8000年ほどあるだろう。人にとって8000年という時は捨てたもんじゃない』

ギムは黙って頷いた。

『平和共存を望み、未来を切り開いていくならば、違った未来の道も開けてこよう』
『違った未来?子孫達が万年先までも生き延びる?』

ガッシュは別な場所にある銀河を指した。
『あぁ、あそこに見える銀河は高度文明はまだない。そしてこの2つの銀河の文明が移住可能な星がある。位置、環境情報を、あの馬鹿でかい入れ物に入れておこう。君たちの子孫が平和共存し未来を望む時、向うの銀河への移住開発技術を教えても良い。もしかすると、ぶつかりだしたもう一つの銀河へ行っている彼が、まとめて移住させてくれるかもしれないがな』
 
『ガッシュ、、、貴方は本物の救世主なのか?』
『本気じゃないだろ?光る見た目で売り出して、暗黒の歴史の方向を変える?違うな。宇宙における生命の緊急対策本部の一員のようなもんだ』
『緊急対策本部?』
『そういう名称ではないが、仕事は内容は近いな。俺達コンビでここに平和勢力を浸透させることに成功させようじゃないか』

『コンビ?、、、、信じられない、、、というかこの展開、、どうして』
『良い反応だと思うがな。普通パニックだろ?ギム、結構面白い。なぁ一緒にやろうぜ』
『、、こんな物を見せられては、ガッシュを信じるしかないと思いますが?』
『なかなか良い!ますます気に入った。じゃ、全面条約違反をさせてもらう前に情報の共有な』

『条約違反?』
ギムは途端に眩暈がして、”Z”の広い空間に戻っていた。

『組織解体の手始めに、この頑固そうな顔達に、”Z”がすでに発令したことに心から賛成してもらうのが手始めだと思うが、どうかな?』

『、、、この世界の未来になどまったく興味がない、富と権力がすべてだ。価値観がまったく違う、、、どう説得するか。ガッシュ私にしたようにできないのですか?』

『この頭たちを全員逮捕して連邦刑務所にでもいれるか?君にはいくつかの情報を見せただけだ。まだ時間がある、緊急時とはいえない今、すべてを問答無用マインドコントロールにする事は条約違反になるし、君たちがしていく事に意味があり、より多くの人々に正しく希望と勇気と共に伝わっていかなくてはならない。俺はいくつか出来る事を進める』

『そう簡単には、、、時間が必要です。必ず未来を約束してくれるのですか?』
『俺は他所の者だぞ。未来を約束するのは、ここにいる君たち以外と銀河連邦政府しかない。手段として、すぐにでもいくつか手伝えるということだ。裏社会の人々にも新しい生き方が必要だなぁ』

「連邦政府、、、複雑に利害が絡んでいます。少し時間をください」
『あぁ待っている。このホテルの最上階ラウンジのフレッシュジュースで喉を潤しながら、とりあえず8万人の新しい生き方と、職をどうするか考えているよ』
『はぁ?本気で、、ガッシュ』

『見てご覧、VIPの方々は震えている。ギムに見せたこの銀河の他に、少しばかり脅しを加えた。あの宇宙空間から今、現実に衝突が起こっている星へと移動して見せた。連邦刑務所の方がよほどましだろう。刑を受けるまでに出来る限りの事をしてもらう。こちらはいつでも次の展開を選べる。向うの銀河の方は未来を間違えなく選択したようだぞ。時を見て順次他所の銀河へ移住する事になるだろう』

ギムの表情は一変して真剣になり、『条約違反の発動期限は?』
『すでに末端の人々までの、生命を守る為に始めた事もある』

『分かりました』

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