遥かなる:エピソード3

  • 2008/03/28(金) 23:36:42

                  遥かなる:エピソード3 詩人
                      
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多くの惑星を従えて、無数の生命と文明を育ててきた、巨大な恒星があった。
彼はその中の一つの惑星に意識をむけていた。
                       
                       
                         
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今日は月が一つも出ていない.
満天の星の輝きがいっそう美しい夜に、二人の人影があった。

一人は、深い緑の生地に金糸の細やかな刺繍の施されたローブを羽織り、
中は装飾の無い白い薄い衣を幾重にも巻いているようだった。
耳と胸元には金の飾りが幾重にも、身分の高さを示していた。
身長が189cmほどだろうか。長いローブがその体の痩せた姿を隠していた。
男の顔には、明らかに疲労がでていた。
しかし今夜は足元に置いた淡い光だけで、闇の中に隠されていた。

「子孫に滅亡という未来しかないというのは辛いものだな。人心が荒廃してその日を待たずして滅亡するだろうと、実しやかに一部ではあるがメディアも伝えている。そしてそれを根底から覆す根拠ある提示もできない。遅くとも50年後には第一陣が流浪の民としてこの恒星系を出るか、、、。
それでも未来の安息は遥か先にあるのだろうか。旅の詩人よ、どう思う」

「多くの場合、生命を育ててきた恒星の最後の瞬間に、その生命達は遭遇することがありません。それ以前に終わるからです」
詩人が応えた。

「まるで見て来たようにいうではないか。詩人は時空を超えて旅をするといっていたな。
ならば我々の最後も見てきたか?」

詩人は首を振った。見たとも見ていないともとれる。
「それで?」

「宇宙も時には、規則正しく運行するばかりでなく奇跡も起こします。
いや宇宙こそ奇跡そのものとも言えるでしょう」

「宇宙こそ奇跡。そう、正にその通りなのだろう。しかしそれは我々の世界に
起こるだろうか?」

「すでにここは奇跡の銀河」

満天の星の下心地よく吹く夜風は、詩人の腰までとどく美しい紺色の髪を優雅になびかせた。
何故か暗い夜にもかかわらず、黒髪ではなく見たことも無い美しい光沢のある紺色の髪の毛だとわかる。

王は自然を笑みが零れる自分に気が付いたが、今夜はこの忘れがたい瞬間を楽しもうと思った。

「奇跡、、、そうだな。詩人よ、そちがその奇跡であろう」
「いいえ、すべての生命達こそ、宇宙の愛する奇跡なのです」

「宇宙に愛されて?そうか。その愛は我々の太陽の寿命を伸ばしてはくれまいか」
「恒星に若さを取り戻すには、燃え尽きてしまったものを足せば良いのです」

王は豪快に笑った。
「はははっ!詩人よ。なんとも簡単に言う。宇宙の奇跡とはそういうものか」
「バランスも変わってしまっていますが、さほど難しいことではないでしょう」

「そうか。そんな事が出来る文明も宇宙のどこかにあるのだとしたら、悩む事もあるまいな」
「恒星ほど長生きをするヒューマン種と、その文明には出合った事がありません。知る限り最も長寿な人は私の大切な友です。彼らならばここの今の状況を本気で考える事でしょう」

「ほぉ、、、してその友は幾つだ?」
「推定1万年は生きています」

「一万年?!人か、、まさに奇跡だな、、、」
王は真上の星空を見上げた。

「子供たちに、子孫たちに夢をもたせたい。生きる希望を、、、、宇宙を旅する詩人にとって、ありふれているだろうがな」

「生命達の思いは同じ、ありふれているなどという事はありません。思いは存在に力を与え方向性を持ちます」

「詩人の言う事は、私には分からない事が多いが不思議と心が癒され安息を得る。貴方を皆に会わせたいと思うがこの恒星系に散らばった107億の人々では限度もあるな」
「安息だけでは未来には足りません。未来を切り開くには希望と勇気が必要です」

「そうだな。偽りの希望でもないよりはましだろうか」
「真実にするのです」

「ん?、、、真実ではなく、真実にするのか。しかし科学者たちには恒星から届く情報を見れば真実か偽りかはあまりに明確であろう。すでにその事実を多くの人々が知りはじめたが?」

「ここの生命達は、どの真実を望むのですか?」

「どの?!もちろん生きる希望の持てる真実を望む!詩人よ貴方は、、、貴方は神か?」

「いいえ違います。神などではありません。できることと出来ない事があります。、、、、残念ながら、この満天の星の輝きの数ほど、言いようの無い悔しさと哀しさも味わいました。
そして全宇宙をも揺り動かすかと思うほどの愛と喜びを知りました」

王はあらためて暗闇の中で、まるでまぶしい物を見るかのように詩人を見あげた。

詩人の目にはまるで夜空が映りこんだかのように、無数の金の星があった。
それはまるで銀河を外から見ているかのような錯覚を覚える。

「、、、なんと美しい、その宇宙のような目ですべてを見てきたですね」
王は初めて言葉をかえた。

「すべてではありません。常に変化しながら接しています。いろいろと見てきましたが、ここに訪れる最後の時はまだまだ先の事、未来は貴方たちの中にあります」

「、、そうですか。私は希望を捨てません。いや、私たちは未来に希望を繋げ生きていくと決めました」

「良かった。きっとさらなる繁栄の時を刻み、子孫は誇りを持って銀河に生きていく事でしょう」
「銀河、、、そうですね。この星空に私たちの未来があるのですね」

「その時は私もまたこの銀河に来ましょう。新時代の次の一歩に為に、何か役にたちたいと思います」

「!なんと、本当にいらして頂けるのですか。ありがとうございます。私は必ず後世に伝えてまいります」

詩人の美しく優しい微笑みに王が見蕩れていると、一陣の風と共に詩人はスーッと消えてしまった。


王は、『これ以上の人心の荒廃などさせません。足下の現実を乗り越え、夢を語り継ぎましょう。私は希望をけして捨てる事はありません』と満天の星に誓った。


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