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宇宙(そら)
- 2008/06/17(火) 17:09:46
宇宙(そら)
私は、宇宙(そら)を見上げるのが好きだ。
夕方、SORAにかかる輪が、今日の最後の光に照らされ、
刻々とその色を変化させていくさまを見る。
その僅かな時間が僅かに癒される時だ。
今日も空中(そら)の交通事情は管理され、ある程度整然と流れている。
私は地上3000mから、眼下に広がる灰色の世界の空中交通網の管理をしている。
このシステムが出来たばかりのころは、大変人気があった。
行き交うものがあまりに多くなると同時に、ここ数年禁止区域での
違反が増え、苦情が始終端末にアクセスしてくる。
本来居住区に入る手前で、地下へと交通の流れは移り、
居住区の空をさえぎる物は少ないはずだった。
「ちょっと最近、マナーは、どうなっているのかしら?!
さっきも居住区の上にいるグループを見つけて、注意したのに無視よぉ。
3回注意、警告1回、まるで無視ってどういう事!
空間チャンネルを変えさせてもらったわ。今ごろこの星の裏側よ」
彼女の綺麗なブルーの瞳の色が、少し濃くなったように見えた。
「ここのところ多い。どうやら空間チャンネルの変更による移動が、
面白いという噂が広まって来ているらしい。エスカレートしてもらっては困るんだが」
「まぁ、条例変更して違反の常連者は、集中ダスト管理センターの
”集積場”にというのはどう?いきなりゴミの中に、ぽい!」
「おいおい!」
「もちろん、命に別状がないゴミの上よ」
「そういう空間チャンネルの使い方は、危険だなぁ」
「そうかしら?今の取り締まりでは、まるで効き目がないんですもの」
「とんでもない。裏側とはいえ、決まったチューブ路に安全に出るが、
長時間かかって戻って来るしかない。それに彼らは、けしてゴミではない」
私はそう言いながら、今日自分の頭の中に浮んだ光景を思っていた。
惑星連邦の犯罪者はこの空間チャンネルを使い、
<巨大ガス惑星M>の衛星の一つ<I>に送られ、刑期を過ごすことになっている。
私は、眼下に飛び交う交通手段のすべてを衛星<I>へ送り込んだ。
この星の暗闇ともいえる裏側ごと、、、。
そこには表で暮らすものを支えている産業がある一面、
ちまたでは、今だに惑星間条例で禁止になっている武器や麻薬を製造し、
空間チャンネルを利用して、密輸している組織があるといわれている。
そう、一部は確かに無法地帯でもあった。
表と切り離せない企業と政治の故に、この星ごと衛星<I>へ、、、。
ふふっ、幸いなこと?に絶対に有りえない。
なぜならこの星は、衛星<I>の58倍の大きさの星だからだ。
私は感じていた。
透き通った空気と香りたつような森の緑、点在する光輝く湖水、
青い山々の景色にいだかれて、大地に立っている私は、
清々しく晴れ渡ったSORAに、美しく横たわる虹のような輪を見上げて、、。
視界が霞んでいく。
「、、どうかして?」
彼女は驚いたような顔で、私を見た。
「ん?いいや、、、。そろそろ次の担当者が来る、ご苦労様。さぁ、君は帰りたまえ」
「、、はい。ではお先に失礼致します」
そう言うと彼女は壁の中に消えた。
彼女のいた正面のパネルの上にハンカチがあった。
忘れ物?
一瞬意味が分からずに、じっと見ていたが、ふと手を頬にやり苦笑した。
あらゆるシステムの問題点は、この星の全てにつながって、
この歪みがじわじわと表面化しようとしていた。
疲れがたまっていることは分かっていたが、長期連続勤務に限界に
来ていたのかもしれない。次の担当者が来たら、私も帰るとしよう。
以前にあの輪の中の、幾つかの小衛星にあるホテルに行ったことがある。
その中でもNO.1の眺望を誇る「グランド・ギャラクシー」は
宇宙港のある一番外側を周る衛星にあり、
主に外からのVIPを、静寂と眺望と最高級のセキュリティーをもって
受け入れている。
そこでは、静かに光り輝く銀河を浴びていられた。
移住した星の、開発をし続けた歴史を持つ我々が、
いつしかまた外の世界に夢を見ているが、すでに惑星間連合が出来上がって久しい。
他の星を自由に開発出来た時代は終わっていた。
次は我々の恒星系を出て銀河連邦を目指すのだと、、、。
まるでSFの世界の話。
現段階で外の世界に、我々が移り住めるような星は見つからず、
懸命な探査の900年もの歴史にも関わらず、
自分達以外のヒューマンの痕跡さえ見つからない。
虚栄と矛盾の巨大な塊のような、地上ではなく、
数日でいい、休暇を申請し少し外へ出てみたくなった。
漆黒の宇宙に存在する、不変の真実の煌めきを感じたいのだ。
ジャンル:
- 小説・文学
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